備忘録

説明と同意とは?

医師「診断としては軽度の認知症です。お薬で進行を穏やかにする方法もありますが、その前に、Aさんが今の生活で大事にされていることや、不安に思っていることを聞かせていただけますか?」

Aさん「実は、このまま一人暮らしを続けられるか心配で…でも、できるだけ今の生活は続けたいんです。でも、お薬を飲むのもなんだか怖いんです。」

ご家族「本人が今の家に愛着があって。介護サービスの利用も考えてはいるんですが。お薬の副作用は私も心配です。」

診察や検査、治療の前に、医師から説明を受け、場合によっては同意書にサインをする——多くの方が経験したことのある場面だと思います。この「説明と同意」、実は医療の現場では呼び方や考え方が少しずつ変化してきています。今日はその移り変わりを、わかりやすくご紹介します。

「インフォームド・コンセント」が基本

最も一般的な言葉が インフォームド・コンセント(Informed Consent) です。「説明を受けたうえで同意する」という意味で、今では医療現場のスタンダードな表現になっています。

「病気や治療についてきちんと説明を受け、納得したうえで治療を受けるかどうかを決める」——これがインフォームド・コンセントの基本的な考え方です。

選択肢を提示する「インフォームド・チョイス」

治療法がひとつではなく、複数の選択肢がある場合には インフォームド・チョイス(説明と選択) という言葉が使われることもあります。

たとえば「A案は効果が高いですが体への負担も大きい」「B案は負担は少ないですが時間がかかる」といったように、複数の選択肢とそれぞれのメリット・デメリットを説明したうえで、患者さん自身に選んでいただく——そんな場面をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

これからの主流「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」

そして近年、特に注目されているのが シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making:共同意思決定) という考え方です。

これは「医師が説明して、患者さんが選ぶ」という一方通行の関係から一歩進んで、

  • 医師:病気や治療についての専門的な情報を提供する
  • 患者さん:自分の生活スタイルや大切にしていること(価値観)を伝える

このように、お互いの情報を持ち寄りながら、丁寧に対話を重ねて一緒に治療方針を決めていく——というアプローチです。

「どちらの治療法が”正解”か」だけでなく、「その方にとって何が一番納得できる選択か」を大切にする考え方とも言えます。

「本人の意思を尊重する」という考え方自体は、決してSDMだけの新しい発想ではありません。厚生労働省の意思決定支援ガイドラインや令和6年施行の認知症基本法、今年改定された成年後見制度など、国の法律や指針のレベルではすでに当たり前の大原則として位置づけられています。SDMは、その大原則を診察室での対話というかたちで日々の医療に落とし込んだ、いわば実践方法のひとつと言えます。

まとめ

呼び方 ポイント
インフォームド・コンセント 説明を受けて同意する、基本の考え方
インフォームド・チョイス 複数の選択肢から患者さんが選ぶ
シェアード・ディシジョン・メイキング 医師と患者が対話しながら一緒に決める

当院でも、みなさまが安心して治療を選んでいただけるよう、丁寧な説明と対話を大切にしています。治療方針について疑問や不安なことがあれば、お近くのスタッフへ、どうぞ遠慮なくお声がけください。